相続登記申請書作成時の注意点
1 記載されなければならない事項
記載しなければならない事項に抜けや誤りがないか確認する必要があります。
記載しなければならない事項とそれぞれの代表的な注意点は以下のとおりです。
⑴ 登記の目的
相続の場合は、相続によって、その所有権が被相続人から相続人に移転しますので、「所有権移転」と記載します。
⑵ 原因
⑴の所有権移転の原因を記載しますが、「〇年〇月〇日相続」と、登記上の死亡日を記載します。
相続する人が、その死亡を知った日ではありませんので、注意が必要です。
⑶ 相続人
基本的に、相続によって、被相続人から、その不動産の所有権を得る相続人の住所と氏名を記載し、末尾に押印をします。
その際の住所地は、住民票上の正確な住所でなければ、なりません。
1つの不動産を複数の相続人が相続する場合は、その持分についての記載を忘れてはいけません。
⑷ 添付情報
添付情報といっても、添付する戸籍や住民票などをすべて記載する必要はなく、「登記原因証明情報」「住所証明情報」(代理人を利用する場合は、「代理権限証明情報」)と記載すれば足りる場合がほとんどです。
⑸ 申請年月日、申請先法務局
窓口にて申請する場合は、その提出日を、郵送の場合は作成日を記入します。
申請先法務局は、その不動産を管轄する法務局となり、法務局のサイトから調べることができますので、間違えないように注意する必要があります。
参考リンク:法務局・管轄のご案内
⑹ 課税価格
課税価格とは、相続登記をする不動産について、相続登記申請を行う年度の固定資産税評価額(複数の不動産について相続登記申請を行う場合はその合算)から、1000円未満を切り捨てた価額です。
⑺ 登録免許税
相続登記の場合は、⑹の課税価格に1000分の4をかけたものから、100円未満を切り捨てたものが原則です。
このとき、遺言書による遺贈によって、相続人以外の人が相続した場合の税率は1000分の20となる点には注意が必要です。
⑻ 不動産の表示
相続登記申請では、相続登記をする不動産が間違いなく特定されるように、不動産の表示を行う必要があります。
土地であれば「不動産番号」「所在」「地番」「地目」「地積」、建物であれば「不動産番号」「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」など、不動産登記簿謄本の表題部に記載されている情報で特定するべきでしょう。
不動産登記簿の表題部をデータで持っているのであれば、申請書をパソコンで作成する際に表題部を張り付けてしまうのも1つの方法です。
2 相続登記の登録免許税の免税措置を利用する場合
相続登記をする際に必要な登録免許税は、条件を満たす相続登記の場合は、免税されることがあります。
例えば、相続により土地を取得した方が相続登記しないで死亡した場合、その土地を取得していた方の相続人は、その1つ前の相続についても登記をするのが、原則です。
そのとき、その1つ前の相続についての登録免許税については、令和7年3月31日までにされる相続登記については登録免許税を課さないこととされています(租税特別措置法84条の2の3第1項)。
また、100万円以下の価額の土地に係る登録免許税についても令和7年3月31日までにされる相続登記については、登録免許税を課さないこととされています(租税特別措置法84条の2の3第2項)。
ただし、これら、特例を利用するためには、相続登記申請書に法令名を記載し、「…項により非課税」と記載する必要があります。
価格等が他の記載上明らかであるとしても、この記載を忘れると免税を受けられない場合がありますので、忘れずに記載する必要があります。
参考リンク:法務局・相続登記の登録免許税の免税措置について
3 相続登記申請書作成は、経験ある専門家へご依頼を
今回ご紹介しましたのは、申請書の記載についての注意点の一例であり、代表的な相続登記に絞った内容になります。
相続する土地の登記状況や、相続を方法、代理人を使うのかによっても記載内容や押印が必要となる人が異なることもあります。
また、記載内容が間違っていた場合は相続登記ができない場合があり、修正などの手間もかかります。
そのため、相続登記の申請書は相続登記の経験が豊富な弁護士のようなプロに任せることを強くお勧めします。